久しぶりに街へ。
10数年まえに買った腕時計、電池が切れたらしくビクともしない。
5年まえも同じになって交換してもらいました。
中央通りの時計専門店です。
自動ドアがすーっと開く。
一歩足を入れたとたん密かな驚きが。
ガラスケースに各種の時計や貴金属、壁際には各種の柱時計、一番奥にはどっしりした接客用のソファ。
配置といい色彩といい空気といい、10数年まえと全く変わっていない。
いきなりタイムスリップした気分。
修理を終わって、一番町のファッションビルへ。
ここは1階から7階までほぼ服飾関係の店がつまっています。ファッションの動向に関心がある者にとって、見て周るだけでさまざまなヒントを提供してくれます。
ところが入ってビックリ。徹底的に模様替えされ、新設の人気レストランには行列さえできている。
大袈裟にいえば、いっぺんに不易と流行双方に立ち合ったというわけです。
(1月27日)
古泉千樫は『川のほとり』1冊しか歌集を出しませんでした。『屋上の土』『靑牛集』は没後になって門人たちが編纂したもの。
私は全歌集を区切りのいいところまで読み、その範囲の上田三四二の鑑賞文にも目を通すというふうに進めていきました。
するとおもしろいことが生じたのです。
自分はとりあげていないのに、上田が秀作として鑑賞している。「なるほど」と見直して○を付け直すことがある。
逆にどうしても承服できず、「なぜこんなのがいいんだ」と毒づきたくなるのも出てくる。 
つまり鑑賞者同士で対話が生じる。

「みなぎらふ光のなかに土ふみてわが歩みくればわが子らみな来つ」

を自分は平板すぎるとしてとらなかった。
ところが上田は

「涙をさそうばかりに尊い」

と高い評価をしている。
病中詠でしかも最晩年の背景を考えればたしかに。
「ここは自分が折れるか」というぐあいに対話気分で読んでいったのです。
(1月25日)
古泉千樫は、斎藤茂吉や島木赤彦ほどには人気がない。
けれどなかなかいい歌がある、いつかまとめて読もうと思っていて、『定本古泉千樫全歌集』(石川書房)をやっと終わったところです。 
今回は上田三四二『鑑賞 古泉千樫の秀歌』(短歌新聞社)も同時並行して読んでいきました。
上田は「はじめに」で、はやくも

「茂吉が私を導き、赤彦が私を鞭うつとすれば、千樫はどうであろうか。それは私を憩わせる。」

といっている。
「憩わせる」はほめことばである反面、ほめていないことばでもあります。
要するに茂吉ほどぐいぐいと押してくるところがない、茂吉は写実と主情の両刀づかいだったが、千樫の場合は

「写実の輪郭が、主情をつつんでくっきりと姿を見せることが、十分には叶わなかった。そこで輪郭と見えるのは、多く型である。」

というわけです。
こういう古泉千樫だからこそ、上田が心を寄せる面もあったのです。
(1月25日)
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▲掲載されている柏崎栄『ある北方教師』

「マッチ売りの少女」ならよく知られていますが、ミズアメ売りの少女もいたのですね。 
岩手県の辺地校に勤めていた、情熱的で人望も厚い、若き教師に柏崎栄がいた。
貧困生活のなかの生徒たちを、何とか人間として伸ばそうと、生活綴り方指導を行う。 
その熱心さが軍国主義の趨勢のなかで見とがめられ、152日間の留置生活を送る。
千厩(せんまや)署から一関署に移されたとき、夜9時になると、寒い冬の町筋を

「ミズーアーメー アマーイーミズアーメー」

と売り歩く少女の声がする。
いつしか、その美しい声を待つようになり、数日途絶えると風邪でも引いたかと心配する。

「再び美しい、歌うような声で呼んで来たとき、私の心はなごみ、その声が遠くなるまで追うのであった。」

柏崎は、困難な戦時を勤めつづけ、1965年に退職。
その回想記録集『ある北方教師』(労働旬報社)の一隅にひっそりと挿まれています。
(1月22日)
朝刊を開いていた家内がいきなり笑ったのです。
それは「朝日歌壇」。
歌壇が爆笑を呼ぶなんて。

「夫のことを「息子さん」と言ったあの小林という人を絶対許さない」(鈴鹿市 森谷佳子)

で、永田和宏氏と佐佐木幸綱氏が採っています。
介護施設に夫が入所した、介護職員に小林という人がいる、訪問したときその職員が「この方は息子さんですか」と聞いた、つまり自分は老けたばっちゃんだと見られた、こんな失礼なやつ許さないーという意味でしょう。 
しかし冷静に考えれば、別の意味とも受けとれます。
長く連れ添い立派な人格の持主として疑わなかった夫が、施設にきて「息子さんですか」と子ども扱いされている。
そのことに悲しみと怒りがこみあげてきたのだと。
私の叔母は長寿の夫を入院させたとき、看護師に赤ん坊扱いにされている現場にショックを受けて、早々に退院させました。
その例が頭に浮かんだのです。
(1月16日)
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▲たっぷりと雪が降り、そこに朝日がさして雲となっていくところ。


2階の北向きの窓からは船形連峰、泉ヶ岳、七ツ森までの山々が見えます。
天気予報の「今夜から大雪注意報」が的中し、夜を通して雪。気温も-7度。
連山とその裾野、さらにその裾の住宅街すべてが、一斉に白におおわれ、さながら砂をまぶした箱庭のよう。
この変貌ぶりにしばし見惚れていたら、雲が切れ、朝光が届きはじめました。
最初はおずおずとでしたが、ほどなく全面的に広がり、山も裾野も薄紅色になったのです。
すると山と山の窪みから、水蒸気が立ち上りはじめました。
光の熱が雪を溶かしはじめたにちがいありません。
水蒸気は、窪を離れて立ちのぼり、ひとかたまりになって宙に浮かびました。
それから「ぼく、雲だよ」と胸を張り、ゆったりと流れはじめたのです。
自分が日本画家ならさっそくにもスケッチするのに、残念ながらその腕がない。
「ぼく、雲」はまさしく雲となって、東方へ向かっていきました。
(1月15日)
渡辺幸一氏は、日本とイギリスの報道を比較しながら「日本のニュース・メディアは報道機関としての使命を十分に果たしていない」とも指摘しています。
「政権側に不利な、あるいは政権側が嫌がる情報を流さないように自主規制している」とも。
この点は国内にいてもよく感じます。
たとえば全国紙を開いても、沖縄問題がはたりと止んでしまった。問題がないからでなく背後の力を意識して自主規制しているから。 
この逆に宮城県内のことでいえば女川の復興がかなりの頻度で伝えられる。復興自体はうれしい。
だが女川は原発の町。
再稼働を目論む目が背後にあって安全・安心を情報として流しているのでは。
肝心なことは、これらのことが、なんの意図も持たない公正なこととして、世の中に発せられているということ。
ではどうすればいいのか。
とりあえず、自分の感度を保ち、やすやすと情報操作にひっかからないこと。
(1月11日)
渡辺幸一氏はイギリス在住の歌人で、同人誌「世界樹」を出しています。
35号の「講演草稿・イギリスで日本の憲法を考える」は、多くの人に読んでほしいエッセイです。
26年間海外に滞在している目で日本をとらえている。
ORBインターナショナルという国際的な調査機関のアンケートによると、「世界で最も信頼できる国はどこか」は第1が日本だった、しかしこの2年でイメージは悪化したと指摘している。
安倍政権になってからの変貌ぶりを中東やアジアの人々はしっかり見ている。
昨年7月、ダッカで日本人7人を含む20人もの人質がテロ事件に遭遇した。これまでなら「撃つな。私は日本人だ」ということが歯止めになった。だのに相手が日本人だとわかっていて殺害された。9条解釈を捻じ曲げた、武器輸出三原則を捨て去った、イスラエルと接近しはじめた、これら動向が背景にあると渡辺氏は語っています。
(1月11日)
ゾゾとはなにか。
ゾゾは実在しない、けれど実在する。
ゾゾには大きな翼がある、けれどネコぐらいともいえる。
目のまえに現れ、話しかけたり、守ったりしてくれる。
こういうゾゾの登場するのは、岩瀬成子作『マルの背中』(講談社)の世界。
主人公は亜澄(あずみ)。弟に理央(りお)がいる。
父母は離婚し、亜澄は母と暮らしている。

「理央はゾゾのことをよく口にした。ゾゾは大きな翼を持ってる、と言ったこともあった。猫を指差してゾゾみたい、と言ったこともあった。」

こういうゾゾを、子どものころ密かに持ったことありませんか。
私はあります。なんと名づけたか忘れてしまいましたが、たしかに。
岩瀬作品は、最初期からのほとんどを読んできましたが、いつでも

「リアルなまなざし+α」

を感じさせます。
機会あればどうか岩瀬作品を読んでみてください。この分野の最達成点を目の当りにできること、受け合います。
(1月7日)
【往還集138】1 笑い飛ばしてください。

「往還集」を連載しはじめたのは2003年8月発行の96号からでした。
それ以前にも「つぶて通信」を掲載していたのですが、いつしか1章を400字に限定して書くことをはじめました。
紙媒体だけでなくブログとしても発信して、今日にいたっています。
それにしても長い間、折にふれて書いているうちに「この話題、まえにもとりあげたのでは?」とわれながら怪しくなることが出てきました。年齢と共に脳の老化もさけがたい。 
先日などは、宮城県産の銘酒について某誌に書く必要が出てきたのですが、名がどうしても浮かんでこない。
「ほら一番うまくて値段も高くて海の町の産だよ」と自分を叱咤するのにどうしても出てこない。
というようなわけで、「往還集」も同じ話題がくり返されるかもしれません。
そのときはどうか、「いよいよボケてきたか」と笑い飛ばしてください。
(なお銘酒の名は「浦霞」でした)
(2017年1月6日)
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