2019年11月アーカイブ

252頁にも及ぶこの本をわずかのスペースではとても紹介できません。関心の湧いてきた方はどうか実物をご覧ください。ここでは子どものときの体験について、自分の場合を記すに留めます。
1945年8月15日といえば日本敗戦の日で、私は2歳7か月。この前後に見聞したことが以後今にいたるまで生きつづけています。
第1、町内の人たちと道路に並んで出征兵士を送ったこと。
第2、白い襷の掛けられた骨壺を迎えに停車場へ行ったこと。
第3、新聞を広げていた祖父が「広島さ新型爆弾が落どされだ!」と告げたこと。
第4、正午のラジオに正座した家の人や近所の人が、神妙な顔をして聞き入っていたこと。

これらの情景は、どういうことであるのかわからなかった。しかししだいに世の中の事も見えるようになるにつれ、記憶の底に貼りついた事柄は、いよいよ輪郭鮮明になり、現在もなお生きつづけているのです。
(11月8日)

【往還集146】22 子どもの日の体験

岩瀬成子『もうひとつの曲がり角』(講談社)の主人公は5年生の「わたし」。
母のすすめで英会話スクールに通いはじめるが、どうも気分的に入りこめない。
べつの通路を歩くうちにオワリミツホさんという、庭で朗読するおばあちゃんに出会う。
それがきっかけとなり、ふたりに不思議な交流が生じる。
ある日の帰りぎわ、オワリさんが

「あなたがこの庭に来てくれるようになってから、なんだかいろんなことを思いだすようになったの」

という。さらにつぎのように、つけ加える、

「わたしはこんな年齢になったけれど、でも、ついこのあいだ、わたしもあなたみたいな子どもだったの。それからわかったの。子どものときに体験したことはそのあとの人生にずっと影響を及ぼしつづけていたんだなってことが。長く生きてきたあいだで感じたり考えたりしたことも、もともとはあそこからはじまっていたんだと、そんなことも思って」
(11月8日)
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