【往還集142】9 ソメイヨシノ

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私の住む団地を造成するとき、社長は桜の園にする夢を描いたらしい。1区画に2本ずつのソメイヨシノを植えた。
そこに移り住んで22年、なるほど一斉に花開いたときの景はみごとでした。
ところが樹木は年々成長する。特にうちの2本はなぜか町内でも1、2位を争う太さになった。
数年たって駐車場を作るために1本を伐採。もう1本はさらに伸び、電線にまでかかりはじめた。
近所の人たちは「きれいですね」とほめてくれるが、いつまでもこれではいけない。
年々迷ってきて、この4月ついに決心。花の終りを待って業者に伐採してもらったのです。
急に大樹の消えた空白感。
空がいやに明るすぎる。
近所の人も「おや?」という表情で通っていく。
けれど3日目から、そこに〈在った〉記憶は薄らぎ、〈無い〉ことが普通になってきた。 
これは人間の場合も同じ、残された人は消えた人の不在にほどなく慣れていきます。
(4月29日)

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このページは、管理者が2018年4月29日 18:11に書いたブログ記事です。

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