【往還集139】18 藤井貞文・続

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『全歌集』に収録された数は4593首。半端な数ではない。
これだけ作っているのに、歌人として評価しないのはどこか片手落ちの感じもしますが、歌人たらんとする気負いもない。それでいて、折に触れてよく作っている。
『僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう』で羽生善治氏は、将棋を職業としたために捨てなければならなかったのは

「駒を動かすという喜び」

と語っていました。
これだ、と私は思ったのです。
藤井はプロ級の作歌はしたものの、プロの域には入らず

「歌を動かすという喜び」

を持ちつづけたのだと。
もっとも長い人生には、戦争体験があります。敗戦も派遣された南方の地で知り、「祖国潰ゆ」を作っています。

「声あげて 泣く我が涙 永久に、この我が泪 伝へはてなむ」
「天地の神 いまさざりしか。しかにあらぬか。我の誠の はた足らざりしか」

と、激しい慟哭を全身から絞り出すように詠んだのです。
(6月12日)

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このページは、管理者が2017年6月12日 10:56に書いたブログ記事です。

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